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はじめに
こんにちは、memexのぴぼです。
過去の出演情報をまとめたページを作ったので、ついでに一個一個振り返ろうと思いキーボードを取りました。
(2019-03-05 21時追記)
memexを知らない人にも見てもらえているようなので、簡単に自己紹介をします。
私たちはソーシャルVR空間でちょっと変わった音楽活動を行っている音楽ユニットです。
sabakichiさん、Mikipomさんから成るテクニカルアートユニット[ars]と共作した、「VRChat一発撮り・無編集MV」で知ってもらえていることが多いです。
楽曲の発表だけでなく、VRChat上で音楽をモチーフにしたワールドを発表したり、インタラクティブ性を取り入れたライブ表現を行ったり、VR時代の新しい音楽活動のカタチを模索しています。
2018-10-14
@VRChat – World: LIVEROID
※ぴぼ ソロ出演
映像:https://twitter.com/yukku_VR/status/1051457677090385920
Mikipomさん作の「LIVEROID」というワールドでのライブ。
「LIVEROID」は演出担当者あるいは演奏者自身が演出のスイッチを操作することで、VRChat上の音楽ライブにリアルタイムに立体視覚演出を付加できるワールドだ。現実世界の音楽ライブにおける「照明」や「VJ」の役割をVR用に昇華させた機能を持っている。
この時まで、VRChat上で立体視覚演出付きの音楽ライブをする場合は、あらかじめ楽曲を決め、楽曲に合わせた演出をUnity上で設定して作る「パーティクルライブ」と呼ばれるものが主流だった。
「LIVEROID」はVRChatで音楽の演奏に集中したいユーザーに対し、簡単に立体視覚演出へのアクセスを可能とした。これはVR音楽ライブの演出プロセスを大きく変える革命的な発明だった。
ちなみにMikipomさんには「Cloud Identifier」MVのワールドデザイン、演出を担当して頂いている。もともとは、これを見て、「LIVEROIDでMVを撮影させてもらえないか?」と相談したことから始まった。
このときはワールドの負荷テストとしてライブをさせてもらった。
これがVRChatで自分の音楽を複数の人に聴かせる最初の機会だった。
基本的には自分の曲を流しながらエアギターをした。
この時点でmemexの活動準備をしており、VRライブについてあれこれ考えていた時期だった。
そもそもVR空間でライブしているとギターを生で弾いているかどうかを見極めるのはとても難しいのでは?と思っていた。
実験も兼ねて、「ギターをチューニングして軽く適当なフレーズを本当に弾く」をして、その後エアギターで楽曲に入った。
(コントローラーを置いてギターを弾くという選択肢もあったが、出演が急だったので自分の曲のフレーズをそもそも思い出す時間がなかった)
終了後その場にいた人たちと話していると、「生演奏であのフレーズはすごい」「どうやってコントローラー持ちながら弾いてるの?」と声をかけられた。
若干の罪悪感を感じながら、「チューニングは本当にしたけど、曲の時は弾いてなかった」と説明して、全然気づかなかったー、なんてやりとりをした。
観客全員が生演奏だと思ったのなら、それは「Virtual = 実質的」生演奏だ。
2018-11-4
@VRChat – World: LIVEROID
※アラン ソロ出演
映像:https://twitter.com/phantom_0810/status/1059070509466308608
外観や演出セットがリニューアルされたLIVEROIDでのライブ。memexのボーカル、アランがソロで出演した。この以前からMikipomさんにはアランと一緒にmemexを始める予定である旨を伝え、実際にLIVEROIDでのテストなどをしており、その関係で誘っていただいた。僕は用事と重なり見ることができなかった。
このときはアランはオーディオインターフェースに接続したコンデンサーマイクの直音で弾き語りをした、はず。
アランの回線環境が当時劣悪で、出演が終わった瞬間にちょうど回線が落ち強制ログアウトされたらしい。そのタイミングがあまりに的確だったためか、
アランはこれを覚えている人たちからちょくちょく「固有スキル:ダイナミックログアウト」と弄られている。
2018-11-19
『VConnectLive』 @現実世界 – 九州大学 & VRChat – World: LIVEROID
※ぴぼ、アランそれぞれソロ出演
概要: VRChatと現実空間を接続して同時開催されたライブ
VRChat側アーカイブ: https://www.youtube.com/watch?v=q1YMFo76Iyo
九州大学側アーカイブ: https://www.youtube.com/watch?v=IBYCYq0BdGM
VRChat内のLIVEROIDでライブを行い、そのライブ中の演者だけが映るカメラを用いて撮影した映像を、現実世界の透過スクリーンにプロジェクションすることで、同時に現実でもライブを行うという実験的なイベント。
特筆すべきは、VRChat→現実世界という一方向なストリームでなく、会場の拍手などの環境音はVRChat側にもフィードバックされていた点だ。
音声だけのフィードバックだが、確かに向こうの存在を感じる。ゲームの中のキャラクターに意識があって、プレイヤーの声が聞こえていたらこんな気持ちかな~と思った。
アランに関して:
伴奏用の録音の上から生歌を重ねたり、リバーブをかけたりした。ステレオミキサーやDAWの複雑な設定が必要になったため、このあたりからライブ時は常時アランPCをぴぼが遠隔操作している。
ぴぼに関して:
YouTube Liveのコメントをトリガーに伴奏を加速させるプログラムを組み、その上でギターを弾くという視聴者参加型セッションのような試みをした。
思っていた以上に視聴者が多く、想定以上に伴奏が速くなるなど、一対多のインタラクションはスケーラビリティを考慮しなくては…と感じるライブだった。
2018-12-16
『Virtual Collection Stage0』 @VRChat
※ぴぼ ソロ出演
アーカイブ: https://youtu.be/rxf-Aot7dak
百聞は一見に如かず、なイベント。
ダンサーのBGM用にギターを弾くという設定で、自作曲に合わせてエアギターをしたり、ラスボスになって列車砲で打たれたりした。
VRChatで多くの人が関わるイベントに参加したのは初めてでしたが、とても人に恵まれたなと思う。主催の方々のイベント進行の技量に関心するばかりだった。
出演者も観客も、参加した皆が楽しそうで、これが幸せな趣味創作だよな~と強く思った。その空気感はアーカイブにも表れている。
2019-01-13
『新春 言の木 演奏会』 @VRChat – World: kotonoki
※アランソロ出演
アーカイブ: https://youtu.be/Vn8Vx3w88Yg
アランのソロ出演。
三日坊主さんの美しいワールド「kotonoki」で開催された。
アランの遠隔オペレーションは以前のLIVEROIDと同じだが、今回はNetDuettoを使った出演者4名による遠隔セッションがあった。
アランは回線速度の関係でリアルタイム接続が難しいので、ほか3名による伴奏をNetDuettoで受信し、その伴奏の上で歌った音を、VRChatのアランのマイク入力にルーティングして出力した。
NetDuettoは各接続者の音量を個別に調整できるので、自分のPCでVRChat越しにアランアバターから出力される合奏の音を聴き、アランPCのNetDuetto画面を遠隔で操作しバランス調整する、PA役をしていた。
NetDuettoによる遠隔セッション自体はかなり昔からある技術だが、VRChatでも音楽演奏勢以外には馴染みがないらしく、リアルタイムセッションができていることに驚きの声が上がっていた。
音だけの遠隔セッションが、存在が同じ空間に在るという文脈と繋がることで、本当にその場でセッションしているように感じられたようだった。
仕様上どうしても、VR空間の一点から音が出力されてしまう。タイミング同期が取れて、かつ音を立体的に配置できるVRセッションがしたいと切に願う。
2019-01-19
『アルテマ音楽祭』@VRChat
アーカイブ: https://youtu.be/ORzh1JyMRY0
生歌生演奏のほかに、パーティクルライブや、インタラクティブな音楽表現が行われたイベント。
memexは「Cloud Identifier」と「月の光映える頃に」の2曲を演奏した。
「Cloud Identifier」のMVは、VRChat内でワンショット無編集で撮影されている。それを実行するための技術としてsabakichiさんにリアルタイムイベント管理システム等を制作して頂いたのだが、今回はそのシステムの一部分を持ち込ませて頂き、MVと全く同じ演出をライブの生歌に合わせて披露することができた。(実際のライブステージへの組み込み等はアルテマ音楽祭に参加されていたMikipomさんにお願いしており、技術的には僕は何もしていない。本当に頭が上がらない…)
「月の光映える頃に」では、歌だけでなく、ギターも本当に生演奏をした。
オーディオのルーティングは下記のようになっている。
ぴぼ:DAWソフトCubaseで伴奏に合わせて、VRコントローラーを持ちながらギターを弾く
↓
ぴぼ:NetDuettoでギター入り伴奏をアランに送信
↓
アラン:NetDuettoで受信したギター入り伴奏に合わせて歌い、リアルタイムにCubaseでリバーブを重畳する。
↓
アラン:オーディオインターフェースの出力を丸ごと入力として扱える機能、ループバックを用いてVRChatのアバターの声として出力
↓
アラン:さらにアラン側の、伴奏と歌のタイミングが一致した状態の音声を
NetDuettoのルーム連結機能で、生放送の配信を担当していただいたおきゅたんbotさんに同時に送信
VRChat上でのアバターの振る舞いについて。
VRChatのデスクトップモードでは通常、マウス操作によって動く頭の角度程度しか身体の動きを表現できない。
アランはデスクトップモードユーザだが、もう少し動きを大きく見せたいと考え、ワールドにメガホンを設置した。
VRChatでは、デスクトップモードでアイテムをつかむと、アバターの腕が90°直角に前に伸びた状態で固定される。その状態で視点を動かすと、腕も顔の向きに追従して動く。
これを利用して、腕を動かして歌っているように見せる努力をした。
結果としてメガホンはなかなか印象的だったようだ。
また、ぴぼのギターについては、VRコントローラーを動かさないと当然手の動きがギターに反映されない。
そこで、下の写真のように、左手用のコントローラーをギターに不安定にぶらさげ、右手用のコントローラーを手にもって演奏した。
比較的スローテンポな曲のため、手を大きく動かしながら弾くことができ、VRChat上でもギターを弾いてるような動きに見せることができた。
これがmemexとしての初めてのライブだったが、見ていてくださった方々の反応はとても暖かく、歓声やシンガロングという熱狂はとても、「リアル」だった。
2019-03-02
『Virtual Collection Stage1』@VRChat
アーカイブ: https://youtu.be/L3K_SnDf3Fo
百聞は一見に如かず2。
一つのステージではなく、小さく分けられた二つの島に立ち向き合ってライブをした。
この時はMVのような視覚演出はなかったため、アランと二人で、演出なしでも受け入れてもらえるのか?という話をしていたが、アーカイブを見るに盛り上がっていただけたようでとてもうれしかった。視覚演出はどうしても我々二人だけでは実行できず、外部のオペレーターが最低限必要になってしまうので悩みの種だったが、もう少し気軽にライブができそうだな、と感じた日だった。
まとめ
VR技術は、「感覚をデザインする技術」である。
VRライブサービスが多く登場し、演奏やモーションについて、記録されているものでよいか、リアルタイムであるべきかという議論を見かけるようになってきた。
その議論に答えはない。
感覚をデザインする技術を手にした我々は、「自分の表現を体験した人にどんな感覚を与えたいか」をだけを考えればよいと、今は思う。
使うべき機能も実装も、そこから自ずと見えてくるはずだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
これからもVR空間でのライブで、どのような感覚を与えられるか、試行錯誤していきたいと思っています。
よければ見守って頂き、どのような感覚を得られたか、感想を教えてくださると、とてもうれしいです。
VRというこの自由なキャンバスで何ができるか、今からとても楽しみです。
ぴぼ