「うたかた花火」遠隔セッションカバー動画公開記念インタビュー イトイ×アラン(memex) & メイキング

バーチャルピアニストのイトイさんとアランによる「うたかた花火 / supercell」カバー動画の公開レコーディングを行いました。

NETDUETTOによる遠隔セッションでのレコーディング風景を生配信するという珍しい試みをした2人に、配信直後にインタビューを行いました。

インタビュー

イトイ:バーチャルピアニスト、ネットセッションマニア。NETDUETTOを愛用しており自身のライブ配信でも同ソフトを使用している。
・Twitter https://twitter.com/ItoiPiano
・YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCRb1JtRsP7_bsG3A70Wg8Aw

アラン:バーチャルオルタナアーティスト、memexのボーカル。memexでの活動の他に、ソロでの楽曲カバー動画も公開している。memexのライブではNETDUETTOを用いて伴奏と歌を遠隔で合わせている。
・Twitter https://twitter.com/memex_aran

ぴぼ:インタビュアー。今回の収録の技術的なサポートを行った。


――今回のコラボはどのように始まりましたか?

イトイ: 「よかったらコラボしませんか?」とアランさんからDM頂いて、やりましょう」と。

――アランさんはコラボは初めてでしたっけ。

アラン: 何かいっしょに一曲を歌ったりとか演奏したりとかはなくて。やりたいなーと思ってたので。

イトイ: なんで声かけられたんだろみたいな。最初よくわかんなくて(笑)

――イトイさんに声をかけた理由を聞いていいですか?

アラン: ええ~~。

イトイ: 「良かったから」と言われたんですけど。

アラン: 良いですよね?

イトイ: 何も面識ないのになーと思って。

アラン: 直感。直感じゃないですかでも。コラボやるってなったのが今年入ってぐらいなんですけど。

イトイ: はい。

アラン: やりたいなあって思う前から(イトイさんの)動画を見てたので、最初に浮かんで来ました。

――ということだそうです。

イトイ: ありがとうございます。

アラン: めっちゃ。めっちゃいい。

――やるってなった後は打ち合わせはどんな感じで進められたんですか?

イトイ: アランさんからやりたい曲がないか打診頂いて。そもそもなんでお呼ばれしたのでわからなかったので、やりたい方向性とかコンセプトとかないか伺って。

アラン: シックな感じでって伝えて。

イトイ: そこから僕は何となく五曲ぐらい出して。

アラン: いただきました。

イトイ: この中からどれかやりたいやつありますか、と。

――アランさんとしては選曲に関しては結構お任せしたい方向だったんですか。

アラン: 相手の魅力を引き出せるほうがいいかなと。

――その後どういう経緯でうたかた花火になったんですか?

アラン: もらったのを見た瞬間にうたかた花火でってなってて。

――その5曲の中にあったんだ。

アラン: そうですそうです。

――なるほど、それですっと決まったと。

――アレンジはどうやって決めていったんですか?

イトイ: in tempoで行きたいのかrubatoで行きたいのかを意識してて。

※ in tempoが「一定の速度を保つ」、rubatoが「自由な速さで」を意味する音楽用語。

イトイ: セッションしながら「どういう感じに歌いたいですか」みたいな。

――一回事前にセッションをしたんですね。

イトイ: そうですね、わりとがっつりアレンジを入れた方がいいのかなぁと最初思ったんですけど。セッションしているうちに、原曲よりに演奏して、ちょっとアクセント入れるぐらいにしようかなと。

イトイ: そのrubatoとかin tempoとかみたいなところもアランさんといっしょに話して、どっちでやりましょうかっていう話をしてましたね。

アラン: そうそう。

――テンポかっちりしない方がいい感じだったと。

――最初は動画撮るだけの予定だったと伺ったんですが。

アラン: 私がセッションの時に言ったんですよね、「これ生でやりたいですね。」って。ちょっと話をぴぼに持って行きますと。

――生でやりたいっていうのはどういう気持ちだったんですか。

アラン: リアルタイムでセッションしてみたときに、この生の感じを届けた方がいいなと思って。何も調整されていないそのままの感じも聴いてもらえたらなあと。

――それくらい素の状態がよかったんですね。

アラン: はい。

――イトイさんとしては生でやるぞって言われてどうでした?

イトイ: えっ生でやるのって(笑)。

一同: (笑)

イトイ: 音源作るにしてもきっちり作りこんでやる感じかなと思ってて。そこでリアルタイムとかどうですかって言われて、お、来たみたいな(笑)

イトイ: ジャズをやってたのもあって、リアルタイムでしか出せない緊張感みたいなのはいいなーって感じていたのでこれはやるしかないぞと。

アラン: やるしかないぞ!(笑)

――じゃあイトイさんが録音したオケに上から歌を乗せる方法の予定だったけど、もっとリアルタイムの緊張感を見せるためにこの形になったという。

イトイ: そうですね。

――遠隔セッションについてはどう感じましたか?始まる前に僕も立ち会ってて、微妙なラグを合わせたりするのはちょっと大変そうな印象もあったんですけど。

イトイ: そうですね。見た目の数値的にはあんまり(遅延が)なかったんですけど、rubatoでってなると気になってしまって。どうしようかなーって迷いはありました。

――なるほど。テンポが固定じゃないから基準がお互いにしかないですよね。ラグに関して意識したことはありますか?。

アラン: ないです。

――伴奏と歌の関係なら歌う側はいつも通りな感じでいいのかもしれない。

――ピアノの演奏が20msecぐらい遅れてアランさんに届いて、そこからそれに合わせて歌うと声がイトイさんに帰ってくるのは往復で40msecくらい。結構でかいですよね。

――リハではイトイさん側は前のめりに演奏するといったやりとりもありましたが。

イトイ: そうですね……けど最終的にはそれをやめて、アランさんの歌ってるフレーズの流れに合わせるように切り替えてました。

――声が伸びるとその分演奏も引っ張ってみたいな。

イトイ: そうですね。

――本当に素晴らしかったです。

イトイ、アラン: (笑)

――遠隔セッションに加えて、生放送での公開レコーディングということでしたけど、いつもと違うところはありましたか?

イトイ: そもそもレコーディングに凄いテイク数かける方なんですね。

アラン: 一緒だ(笑)

イトイ: (笑)一発ってなると、五分の曲をまるまるやるとミスは出てきやすいししかも放送乗ってますから。より緊張しましたよね?

アラン: しましたね。

イトイ: もともとオケがあってそれに乗せるみたいな形式でもないので。リアルタイムでアランさんの声を聴いてそれに対してフレーズ変えたりしてみたいなことをして。そういうところはやっぱ凄いスリルがあって良いなあと思ってます。

――リアルタイムじゃないと出せない緊張感。

イトイ: オケもらってそれに歌合わせてピアノ合わせてとかだと、互いの呼吸とか思惑がちょっと合ってないところも出てきたり。

アラン: うん。

イトイ: そういうところが合わせられたっていうのは一番よかったところかなと思ってます。

――アランさんは公開レコーディングでしたけど、大変なところはありましたか?

アラン: ブレスが一番気を使ったところです。ピアノ伴奏っていうのもあるしリアルタイムっていうのもあるし。

――呼吸音が目立ちますよね。

イトイ: 確かに。

アラン: それも含めて見応えになったらいいなと思います。

――遠隔セッションにおけるアーティスト視点の貴重なお話が伺えました。本日はどうもありがとうございました。

収録映像

収録したカバー動画は下記URLよりご覧いただけます。

うたかた花火 / supercell – イトイ × アラン(memex)Tele – Session Cover – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=UWueOFzUejM

また、生配信した収録風景は下記URLよりご覧いただけます。

【遠隔セッション】イトイ × アラン(memex) 公開レコーディング【NETDUETTO】 – YouTube https://www.youtube.com/watch?v=hYSO347XwiM

背景技術

音声

生配信時

NETDUETTO VSTモードのマルチアウト機能を用いて、イトイさんのピアノの音とアランの歌をDAW上でミックスしました。

その音声をオーディオインターフェースのループバック機能を用いて配信ソフトウェアのOBS Studioに入力して配信しました。

動画版

NETDUETTOは通信環境によっては音声にノイズが含まれてしまうことがあるため、イトイさん、アランの2人に配信中手元PCでそれぞれのパートを録音して頂きました。

動画版ではそれらの綺麗に録音できているトラックを生感を失わない程度にミックスして仕上げています。

映像

映像は遠隔地の2人の様子を合成して同じ空間にいるように見せる方法を用いました。

イトイさんもアランも自前のUnity空間上で動くことができるため、事前にカメラの位置・画角・演者位置を設定したUnityプロジェクトを共有することで違和感の少ない画作りに務めました。

アランのモーションはアランPC上で立ち上げたバーチャルモーションキャプチャーを用いて頭:トラッカー、腕:VIVEコントローラーの3点トラッキングで収録しました。

バーチャルモーションキャプチャーのOSC送信機能を用いてぴぼPCのグローバルIPに直接モーション情報を送信することで、ぴぼのUnity空間上でアランのモーションを再現しました。

イトイさんの映像はDiscordを用いてぴぼPCに送信しました。

ぴぼPC上のアランの映像とイトイさんの映像をOBS Studio上で合成することで、同じ空間にいるように見せることを目指しました。

共有したプロジェクト内で設定した立ち位置と画角のイメージ

背景画像

Discord経由で渡されるイトイさん側の映像(グリーンバック)

アラン側映像(グリーンバック)

実際の配信映像

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