「まだ現実空間での音楽活動で消耗してるの?」とタイトルにしようと思ったけど怖いのでやめました。
ぴぼです。
memexという二人組バーチャル音楽ユニットを始めました。
この記事は、どうしてバーチャルアーティストになったの?というお話です。
以下、現実空間のライブに対しVR空間でのライブが自分に合っているという話が多分に含まれますが、現実空間でライブを行うことを否定するものではありません。僕もmemexとは関係なく今度現実空間でライブするし。
Contents
バーチャルアーティストの定義
この記事におけるバーチャルアーティストは、VR空間上でのライブ活動を行う音楽アーティスト、程度の意味です。既に多くの方が全く異なる活動趣旨でバーチャルアーティストと名乗っておられますが、ほかに適切な言葉が見つからなかったので。
きっかけ
今年の5月30日、後輩に誘われて、VRChatで行われた八月二雪さんのライブを見ました。
(VRChatはざっくり言うとオンラインのVR空間にみんなで集まって話したりできるサービスです)
ボーカルのQキキさんの生歌のパフォーマンスが素晴らしかったのはもちろんですが、何よりもライブ会場の客席の空気感に驚いたことを覚えています。
周りのサイリウムを振っている人々は全員本当に生きているし、感嘆の声を漏らすし、ライブが終わった後に皆が自然と「凄かった…」と感想を共有している。現実空間でのライブと変わらないか、それ以上の熱気がそこにありました。
難しいことを考える前に、「自分もこれをやってみたい!これが自分の求めていた音楽活動の仕方だ!」と感じていました。
バーチャルアーティストという形態のメリット
VRライブに行ってみて、VR空間で音楽活動を行うバーチャルアーティストという形態が、今までライブを伴う音楽活動をするにあたって懸念していた問題をすべて解決してくれることに気づきました。
その問題は、例えば下記のようなものがあります。
- 記録の問題:後に残る作品(.mp3とか)の制作を重視したい
- 金銭の問題:ライブをするにはとってもお金がかかるけど、したい
- 移動の問題:重い機材を運ぶのがしんどい
- 時間の問題:本業(学業、今後は仕事)と両立したい
記録の問題
VR音楽活動という形態が現れたおかげで、宅録をメインにしながら、気軽にお客さんの目の前でライブをすることができるようになりました。
自己肯定感を保つために音楽活動がしたい自分にとっては、作品が多くの人に見てもらえるかは非常に重要な問題です。相対的な話ですが、宅録による楽曲制作に対して、ライブ活動は成果が可視化されにくいし、届く人が少ないです。
約一年間、週一回のペースでライブをしていた時期があるのですが、終わった後から振り返ると、メンバーがデジカメで録画したいくつかの映像しか残るものなく、結構な虚しさがありました。またライブという作品はその場に行くことでしか本質的には体験できないので、作品を見てもらうためには金銭と移動と時間のコストを受け手に強いることになります。
それに対して、宅録は曲ができたらそれが成果で、Webで公開すればいつまでも誰かが再生できます。
だから、「基本的には宅録で活動したい(=バンドとは名乗らない)けど、でもライブはしたい」という矛盾した気持ちを抱いていました。
ライブにかかるコストを極限まで下げてくれるVRライブは、自分にとってこの上ない形態でした。
金銭の問題
今普及しているソーシャルVR空間では場所代が必要ないため、気軽に・やりたいときにライブを行うことができます。(いつでも視覚演出付きでライブができるワールドがあったりして、最高)
お客さんも家からアクセスできるし、払いたくないお金を払わなくてよいです。(500円のドリンクとか。)
(皆そうだと思うけど)僕は思った時に思ったことをやりたいので、貧すれば鈍する状況になってしまうのは避けたいです。
ライブをするのにはお金がとてもかかります。バンドという形態を保つために、ライブ費用以外にお金が回せなくなることは非常によくあって、レコーディングはできない、MVはもちろん録れない、ジャケットも準備できずiPhoneのカメラで適当に空の写真を撮るみたいな状況が生まれてしまいます(実体験)。
お客さんを呼べないバンドは一回だいたい数万円を支払ってライブをしています。何にお金がかかるのかというと、ほとんどが場所代です。現実世界では土地が限られているため、ライブする場所を借りるのにお金がかかります。詳しくは「バンド ライブ お金」とかでググっていただけるとだいたいイメージできると思います。
VRライブという形態により、誰も損をせずに、見たい人にだけライブを見せるということがようやくできるようになりました。
移動の問題
家からVR空間でライブすれば、輸送を気にせずたくさんの機材をライブに持ち込めます。
一個約500gのエフェクターを10個詰めた重さ約5kgのケースを手に持ち、 約3kgのギターを背負って、汗まみれで帰宅ラッシュの満員電車に乗って帰るのはいろいろな面で大変でした。また、持っていきたい機材を輸送の観点から断念してしまうことが多々ありました。アンプとか、PCみたいな壊れやすい機材とか。
時間の問題
VR空間で練習・ライブを行えば、平日夜でも時間を無理なく音楽活動に充てることができます。今は学生ですが、4月からは就職するので、本業と両立できる活動形式を求めていました。
ライブの練習をするとなると、メンバーと待ち合わせをして音楽スタジオに入ることになりますが、2時間の練習のために往復2時間かけて移動するのは時間効率が非常に悪いです。また、練習時間が外部要因により決まってしまうので、「もう少しやりたい」「ちょっと確認したら終わりでオッケー」というときにも融通が効きません。
実際、Discordで通話しながら、ここはこう歌おう、とかここはこう直そう、とかをやっていますが、とても快適です。
バーチャルアーティストという形態のデメリット
もちろんデメリットも多分にあって、メリットと釣り合うかどうかは人によると思います。大きな点で3つあります。
楽器を演奏している手元が見えない
視覚的に細かい指使いを見せたりするのが難しいです。
リアル楽器の演奏技術を見せるのには向いていないかもしれません。
タイミングを合わせたセッションが難しい
音の遅延の問題で、手軽にセッションを楽しむということが非常に難しいです。別途NETDUETTOなどを導入することで解決できる場合がありますが、リアルの快適さと比較しがたい部分があります。
活動を始めるハードルが高い
2018年12月現在、VR環境をセットアップしてVR空間用の自分の容姿を設定し、音のルーティングを設定するには、ある程度のPC関係の知識を要求します。
さらに、必要な機材が高価です。「良いギター(曖昧)1本」と「VRReadyなPCとHMDの合計」はだいたい同じ程度なので、どれくらいこの形態に価値を感じるかの問題だとは思いますが…。
まとめ
バーチャルアーティストは、
・時間、(継続的な)金銭、移動のコストを極力かけずにライブ活動ができる
・楽器演奏を見せるのが難しい
・活動を始めるハードルが高い
という特徴がありそうです。
上記のメリットにとても心惹かれるので、バーチャルアーティストを始めました。よろしくおねがいします。
この記事を読んで、
「お母さん、オレ、バーチャルアーティストやりたい!」
「バーチャルアーティスト?アンタ、前もバンドやって続かなかったじゃないの!」
「バーチャルアーティストは、家からライブ出来るから、スキマ時間に無理なく活動出来るんだ!」
「仕方ないわねぇ、ちゃんとやるのよ」
というやりとりが全国で生まれてくれたら幸いです。